中学校の部活動の地域移行って? ― 静岡県富士市の実証的モデル事業をのぞいてみる
コンサルタント 溝口静岡県の暮らし・制度
2025年12月15日(月)
こんにちは。リージョナルキャリア静岡(運営:株式会社リンク・アンビション)コンサルタントの溝口です。
私自身、現役中学生と、これから中学生になる子どもを育てる親として、気になっているのが「中学校における部活動の地域移行(民間移行)」。
部活動の地域移行とは、文部科学省が主導し、これまで学校の教員が担ってきた部活動を、地域のスポーツクラブや民間団体などへ移していく取り組みのことです。
受け皿となる地域の体制、費用や送迎といった保護者負担への不安はあるものの、地域へ移行することで「部員数不足で成立しなかった活動ができるようになる」「専門的な指導を受けられる」「企業・団体との連携で“社会に近い学び”が生まれる」といったメリットも期待されています。

1. 富士市でも2026年から段階的に地域移行がスタート
私が暮らす静岡県富士市でも、2026年から部活動の地域移行が本格化します。これに先立ち、2025年9月に中学生が市の魅力を学び・発信する新しい部活動『国際観光部 ~富士市の魅力見つけ隊~』が発足しました。
運営を担うのは一般社団法人F-PRIDE。代表の中島さんは富士市出身で、北海道にて約20年間、森の再生や環境教育に携わってきた方です。“自然の中での学びや仲間との探究体験をつくりたい”という思いのもと、富士市教育委員会・富士市交流観光課とともに立ち上げ、市内企業や団体も協力しています。
ブログ執筆時点では、第四回まで終了しています。その中から、印象的だった内容をいくつかご紹介します。
◆市内サイクリングツアー(10月)

(写真は全て一般社団法人F-PRIDEさん提供)
生徒のアイデアを取り入れて運営側がコースを設計。
当日は、プロ自転車ロードレースチーム「レバンテフジ静岡」の皆さんとともに市内を走りました。
自転車だからこそ気づけるスポットに立ち寄る中で、「観光客の立場で見たら、富士山と駿河湾を同時に眺めながら走れるのは特別な体験だ」という気づきが生まれたり、休憩やトイレの場所など改善点にも目が向くようになりました。
◆岳南電車に乗車&社長と対話(11月)

工場夜景とレトロな車両が人気の岳南電車では、吉原駅にて岳南電車の奥田社長から歴史・課題・今後の展望についてお話を伺いました。
生徒たちは、インバウンドや観光においでどんな取り組みができるかという視点で積極的に質問。駅構内にあったら良いものなど、アイデアを広げる対話の時間になっていました。
◆インバウンド動向調査ワーク(11月)

この日は、富士駅・新富士駅に分かれ、外国人観光客へ英語でインタビューを実施。
2024年の富士市の外国人宿泊者は、2019年比で2.2倍に増加しており、市内でも外国人観光客を見かける機会は確実に増えています。
事前に質問内容を考え、英語で質問文を作成。
どこから来たか?何をしに来たか?どうして富士を知ったのか?
見知らぬ外国人に声を掛けるのはとても勇気のいることですが、協力的な観光客にも助けられ、徐々に自信を持って取り組めたそうです。
語学力だけでなく、コミュニケーション力や、“自ら動く力”を育てる貴重な経験になったのではないでしょうか。
冬からは箱根・河口湖といった観光先進地へもバスツアーで視察に出かけ、最終的に観光提言書をまとめ、2月にはプレゼンを行います。
まさに「体験→学び→発信(提案)」を軸とした活動です。
2. 活動全体に共通する「4つの重要ポイント」
今回「中学校における部活動の地域移行」の実証的モデル事業として、F-PRIDEは、以下の4点を重要ポイントとして掲げています。
1.中学生に対し「観光・国際交流・まちづくり」を学び・体験の場を設けている。
2.「インバウンド(訪日外国人観光客)動向」や「観光先進地」への視察といった要素を含めており、単なる地域見学ではなく「観光振興」「国際観光」という専門性のある視点を備えている。
3.市役所・観光課・教育委員会・民間団体(F-PRIDE)という複数セクターが関わっており、官民連携・教育×観光というクロス領域型の取り組みである。
4.フィールドワーク、提言プレゼン、視察といった「体験→学び→発信(提案)」の流れを重視しており、まちの観光資源や国際観光の可能性を若い世代に問い直す構造がある。
3. 地域移行は「不安」だけでなく「新しい可能性」でもある
国際観光部の活動を見て、従来の学校部活動では得られない体験がたくさん詰まっていると実感しました。
他校の生徒との交流も、この年代では貴重な刺激になります。
富士市ではこのほかにも、サッカー、バスケットボール、野球、剣道、ダンス、陸上競技、吹奏楽、WEB開発、宇宙科学など、さまざまな実証的モデル事業が立ち上がり、静岡県内の他地域でも、自治体と民間による挑戦が始まっています。
少子化や教員負担といった課題を背景にした部活動改革ですが、地域移行は「子どもたちの可能性を広げるきっかけ」になり得ると感じています。そして大人にとっても、「自分の得意分野で子どもたちの未来を支える」という新しい地域貢献の仕方が広がっているのだと気づかされました。
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この記事を書いたコンサルタント
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